- AIなどの発達によって公務員の仕事はなくなる?
- 業務にAIを導入している具体的な事例は?
- 今後の公務員の将来性は?
こんな疑問にお答えします。
この記事を読んでいる方の中には、「公務員を目指しているけど、将来AIによって公務員の仕事がなくなる可能性があるの?」と不安に思っている方も多いのではないでしょうか?
ぼくは以前「RPA」という先進技術を役所の業務に導入する主担当でした。
まさにAIで役所の単純作業を自動化することで、効率化を図る事業のことです。

本記事の内容
・AIに公務員の仕事が奪われるといわれる理由
・実際に業務にAIを導入している自治体
・AIの導入が急速に広がらない理由
では前置きはこのへんにして、早速はじめていきましょう。
AIに公務員の仕事が奪われるってホント?
みなさんは「将来AIによって公務員の仕事が奪われる」という話を聞いたことはありませんか?
野村総合研究所とオックスフォード大学の共同研究レポートでは「将来AIやロボットによって代替される可能性が高い職業」として100種の職業があげられています。
その中に
- 行政事務員(国)
- 行政事務員(県市町村)
参考:「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に」 | 野村総合研究所
というように公務員の仕事が含まれていたことから、こうした声が聞こえるようになりました。

そうとも限りません。
実際すでにAIの技術を業務に導入し、職員の業務削減に成功している自治体がいくつもあります。
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既にAIを導入している先進的な自治体の事例

AIを導入している地方公共団体は76団体(H31.1.8時点)あり、全地方公共団体の約4.37%となっています。
具体的な事例として、さいたま市とつくば市の例を紹介します。
埼玉県さいたま市の事例
- 約8千人の保育所入所申請者を市内300施設に割り振る際、優先順位や申請者の希望をふまえながら約1,500時間をかけて選考していた
- 市の割り当てルールをAIに学習させたところ、入所選考が約数秒で完了
- AIの結果と、職員が直接行なった結果が一致
茨城県つくば市の事例
- 3月から4月にかけて行う異動届けに関する事務作業の一部(発送簿作成)をRPA化
- 作業時間が85時間から14時間になり、約83%の削減に成功
- RPAにより入力ミスも減少した

RPAとは「Robotic Process Automation」の略で、事務員などが行う一連の定型作業を自動化できるシステムのことをさします。
一方AIとは、人間と同じように学習機能を持つ機械のことです。
AIとRPAを組み合わせることで、より高度な業務の代替が可能になります。
AIの導入が急速に広がらない理由
このようにRPAの技術などによって、公務員の業務が自動化される動きは徐々に広まりつつあります。
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その理由について説明します。
①予算が付けられない
RPAなどのAI技術を業務に導入する際には多額の予算が必要です。
例えば全国で初めてRPAを導入したつくば市が採用しているRPAソフト「WinActor」は、100万円の使用料がかかります。
これは年額のため、継続して使う場合はその都度100万円がかかる計算になります。
現在AI技術を業務に導入している自治体の多くは、実証実験として費用0円で導入しているところが大半です。

実証実験とは、民間企業が前例のない取り組みをする際、協力してくれる自治体に無償でサービスを提供することです。
どこかの自治体でひとつでも実績を作ることができれば、同じ事業を他自治体で横展開していくことが可能になります。

ただ導入費用が免除になる自治体は最初に導入できた自治体のみです。
それ以降の自治体は相応の費用が必要になります。
総務省の調査で「ICT/IoTを利活用した事業を進める上で、当面の課題・障害と想定されるものは何でしょうか?」という質問に対し、「財政が厳しい」という回答が80%と一番多くなっています。
参考:地域IoT実装状況調査(2019年度) | 総務省
今後も少子高齢化で多くの自治体の予算は縮小されていくことを考えても、多額の予算を必要とするAI導入が急速に進むのは難しいでしょう。
②担当できる人材がいない
AIやRPAを業務に導入する際には、先端的な技術に精通している人材が必要になります。
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ただプログラマーをはじめとしたIT人材自体が不足している今、行政組織にそうした人材がいる可能性は極めて低いでしょう。
企業と役所の間に入って調整できる職員がいないため、AIなどの導入が難しいのが現状です。
AIが導入されても公務員の仕事自体がなくなるわけではない

確かに日々の簡単な単純作業などは、AIの技術で置き換えることが可能です。
しかし役所の業務はそのような単純作業だけではありません。
日々窓口や電話で寄せられる住民の声や自治体の現状に応じた適切な行政施策など、マニュアルではない臨機応変な対応が求められる場面が数多くあります。
最初に紹介した野村総研とオックスフォード大学での共同研究においても、「他者との協調や、他者の理解、説得、ネゴシエーション、サービス志向性が求められる職業は、人工知能等での代替は難しい傾向があります」と述べられています。
平成29年度における全地方公共団体の総採用者数と総退職者数のように、今後公務員の数はどんどん減っていきます。
- 総採用者数:127,249人
- 総退職者数:205,457人
公務員の減少傾向は止められないため、技術の力で補える業務はどんどん自動化していかなければなりません。
先進的な事業に数多く取り組み注目を浴びている奈良県生駒市の小柴市長は、著書の中で以下のように述べています。
AIやITを活用すれば、どんどん仕事が効率化され、自治体に必要な職員数は大きく減少するでしょう。
同時に、人間にしかできない業務や、AIと人が連携すれば一層効果的に進められる業務に、公務員がこれまで以上に注力して、引き続き市民生活の向上や社会の発展に貢献することは、これからも十分できるはずです。
公務員がこれからの時代に生き残っていくには、人間にしかできない仕事に特化し、現場に入り、専門性に磨きをかけることが不可欠です。
参考:10年で激変する!「公務員の未来」予想図 | 小柴雅史
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まとめ:公務員の仕事がAIに代替されるからといって公務員が必要なくなるわけではない
本記事の内容をまとめます。
本記事のまとめ
- AIの導入が急速に広がることはない
- 今後は「機械と人の分業」が進んでいく
AIなどをはじめとしたプログラミングに関する知識の必要性は、公務員が働く行政組織でも高まっていくでしょう。
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それでは今回もお読みいただきありがとうございました!